一般的に「アニメーション」とは静止画を動画にしたものの呼称。動きのない一枚の絵(セル、コマ、フレーム)を連続してつなげることで、あたかも動いているように見せる手法のこと。語源は「霊魂」を意味するラテン語の「アニマ(anima)」に由来し、「魂を吹き込む」「命を与える」というニュアンスが含まれています。
CG用語では「モデリング」で作成したキャラクターや物体に動きをつけるデータのことを指します。同義語で「モーション」と呼ばれることもあり、「リギング」を含め、対象物に動きを与える一連の工程を総じて「アニメーション」と呼びます
建築業界では、CGの進化により、静止画のCGパースでリアルなイメージ図を作成することが可能になりましたが、そこに日当たりなどの日照や周囲の建物や自然環境の状況と計画建築物を照らし合わせることができる「建築アニメーション」と呼ばれるシミュレーションができるようになりました。
例えば、トヨタの「コネクティッド・シティ」のプロジェクト概要で公表された「建築シミュレーション」は、建築物だけではなく町全体のシミュレーションになっています。建築物の形や大きさの確認はもちろん、窓から差し込む光、もしくは窓から眺めることのできる景色、動線の確認、周辺環境との調和など、「建築アニメーション」を作成することにより事前にあらゆる状況をシミュレートすることができます。
ここまで壮大なプロジェクトでなくても、「建築アニメーション」はクライアントのイメージを具現化するにはうってつけのツールになっており、商業施設やオフィス、新築マンションなどのプレゼンテーションに頻繁に利用されています。
静止画であるCGパースでも具体的なイメージは充分に伝えることができますが、観る者の視点が一つに固定されているため、従来の2Dパースから少しリアルになったくらいの違いでしかありませんでした。その点では、クライアントからの変更が生じた場合、「テクスチャ」を変えるだけで雰囲気の違いを確認できたり、「マテリアル」の変更で材質の違いを検討したりというインタラクティブな対応が可能というメリットもあります。
ただ、それだけでは実際の空間の広さであったり、天井の高さであったりという認識が難しい面もあります。とくにオフィスや商業施設など不特定多数の利用者が存在する場合、2Dパースだけではイメージが先行してしまい、実際に竣工した際にクライアントとの乖離が生じてしまうリスクもあります。思っていたよりも天井が低い、イメージ図に比べて部屋が狭い、とくに多いのが光源についての乖離で、明るいと思っていたら暗い、逆に明るすぎるといったケース。
「建築アニメーション」ですと、そういう点でのリスクをかなり軽減させることができます。2Dパースに比べると製作期間も長くなり、コストもかかりますが、リスクヘッジという点、プレゼンテーションでの好印象という点では費用対効果が期待できるツールでもあります。
また、同じ「建築アニメーション」でもCADソフトの機能を使って「モデリング」した空間内を移動できたり、指定した立ち位置から上下左右360°を確認したりすることもできます。このような機能の多くはタブレットなどを用いて手軽に空間を確認することが可能で、「モデリング」自体も基本的な間取りを入力するだけで誰でも作成することができます。
その他にもAR(拡張現実)を用いて、実際の空間でインテリアや設備機器の配置を自由に確認できたりするアプリも存在します。