広範な語意としては「複数のものを合成あるいは組み合わせる」という意味で、CG用語としては主に「デジタル合成」のことを指します。「デジタル・コンポジット」と呼ぶ場合もあり、「コンポジット」を職種にしている方たちを「コンポジター」「コンポジッター」と呼びます。
3Dモデルの造形物、2Dで制作した作画、撮影をした実写映像など異なる素材を1フレーム内に組み合わせる作業、または工程のことを「コンポジット」と呼びます。素材間の色調や角度・解像度を調整する編集作業を経て、あたかも1枚の絵であるかのように仕上げていくのが「コンポジター」の役割であり、現状のCG映像やVFX制作の現場では必要不可欠な存在といえます。
映画やCMなどの映像作品では、どこまでが実際にカメラで撮影したもので、どこからがCGなのか区別がわからないほどに「デジタル合成」の技術は向上しています。俳優のスケジュール、撮影現場の確保、天候など製作現場のコストを抑えるという意味でもCGを多用した「コンポジット」編集は重要セクションであり、映像作品の良し悪しを左右するものです。
とくに「コンポジット」に関わる仕事をしているスタッフは、そのスキルや人脈によって映像ディレクター、もしくは映像クリエイターとしてキャリアを上げやすいポジションにあるともいえます。その反面、クライアントからの要望に対しての色彩感覚や画面上での配置バランス・観察眼などの芸術的センス、チームを動かすためのマネジメント力やコミュニケーション能力も求められます。もくもくと作業をする職人的な面とセクション全体を見渡す監督的な面、どちらのスキルも必要になりますので、より人間力が試されます。
「コンポジット」を生業にしているエンジニアの多くは上記動画の「Adobe After Effects」の操作方法から技術を習得していることが多いので、業界ではこちらのスキルを必須にしている会社がほとんどです。もちろん3DCGソフトや「Adobe Photshop」のスキルなども求められますし、リアルさを追求するという点では人体解剖学などいろいろな構造や構図の知識を得ることも重要になってきます。
また、通常の3Dモデルや3Dパースではソフト内蔵の「レンダリング」処理によって「シェーディング」であったり「ライティング」であったりという加工を行いますが、対象が映像作品になってしまうと、その「レンダリング」処理の時間が膨大なものになってしまいます。その時間を省略するため、あえて「シェーディング」などの「レンダリング」を施さない状態で、別に影を追加したり照度を上げたりというコラージュ的な「レンダリング」工程も「コンポジット」には含まれます。
アニメ作品などでは、「モブ」と呼ばれる背景の中で動く人物であったり、走る車や電車であったりなど、3Dモデルを製作しながら実際の映像に組み込んでいく作業も「コンポジット」に含まれることもあります。もともとセル画と背景画を組み合わせて撮影していたことから、アニメ業界では「コンポジット」のことを「撮影」と呼んだりもします。
建築パースには「コンポジット」という工程はなく、「レンダリング」後の仕上げ加工を総じて「レタッチ」もしくは「ポストプロダクション」と呼びます。ですが、動画のように実際には「コンポジット」に近い作業を行っています。